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しなやかな伝統建築

【※2016年9月13日の記事を再編集しています。】

おはようございます。
「和みの一級建築士」オカです。

神社やお寺に見られる日本古来の伝統的な木造建築は地震の際に、
一般住宅やビルなど現代的な工法で建てられた建物とは違う揺れ方をすることがわかってきました。

そのため、耐震補強にしても違ったやり方が必要だそうです。

伝統構法で建てられた建物の特徴は金物をほとんど使わず、柱や梁は木組みで構成されていることや柔らかい土壁を使っていることがあげられます。
また、基礎部分は地面に置いた礎石の上に柱が置かれ固定されていない場合が多いそうです。

石場立ての伝統建築

石場立ての伝統建築

こうした伝統構法で建てられた建物は、地震の揺れに対して通常の建物よりも
大きく変形し木組みの木材同士がめり込んだり、土壁にひびが入ったりします。

でも、地震のエネルギーをあちこちで少しずつ吸収するため
相殺されて建物全体で見ると壊れにくい構造になっているのです。

この建物を揺らす実験でも、実際に建っているような建物を参考にした
実物大の「少ない壁しかもバランス悪く配置された建物」は震度6のゆれにも耐えました。

建物はギシギシと音を立て土壁にもひびが入ったが倒壊はしなかったのです。

この実験を行った京都大学の鈴木祥之教授は

建物全体の損傷はそれほど大きくなく、
伝統的木造建築の持つしなやかさと粘り強さが改めて実験で証明された。

と評価したそうです。

ところが平成19年7月に起きた新潟県中越沖地震では、
鈴木教授の調査で神社やお寺で思わぬ被害が確認されました。

土壁に筋交いを入れたり、合板に変える補強をしていた建物で
補強部分の周辺の柱や壁がとくに破損するケースが見られたそうです。

聞き取り調査をすると
1964年の新潟地震のあとに耐震補強工事として入れられたのです。

なんとも皮肉なことです。

一般に現代工法で建てられている木造建築物は筋交いや合板で建物全体を固くすることで
地震に対する耐力を持たせる補強をするんです。

しかし鈴木教授は

この方法は伝統的木造建築物には当てはまらない。

しなやかで粘り強い伝統的木造建築物が
筋交いなどで部分的に補強されて固くなってしまって変形しにくくなり、
それに比べて柔らかい周辺部分の柱や壁に被害が出たと考えられる。

耐震補強も粘り強さを活かす工法で行う必要がある。

と話されています。

鈴木教授はこの粘り強い補強を、
世界最大級の木造建築「東本願寺の御影堂」の耐震改修工事にこの研究成果を活かしています。

京都東本願寺御影堂

合板などを使わず、柱と柱との間に揺れを吸収するはしご形の木のフレームや小さな土壁を取り付ける補強を行っています。
また、瓦屋根の下の土を軽くする工夫もしているのです。

このような補強は揺れを吸収して変形を小さくできるのだそうです。
壁を多くしたり筋交いなど補強材を入れる必要がないのでほとんど外観を損なうことがないのです。

いろいろなところで伝統構法は見直されつつあります。

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