『健康的な暮らしで次世代へと住み継ぐこだわりの住まい』
耐震・断熱性能×自然素材で健康なくらしを
次世代へと住み継ぐこだわりの住まい
受け継いだ家を健康的な暮らしができる快適な家に。
築40年ほどとなるこちらのお宅。大工である、お施主様のお父様が丁寧に建てられたおうちでした。
とても立派なおうちなのですが、このまま住んでいくには耐震性や老朽化に心配がありました。
旧耐震基準で建てられているおうちを、耐震補強で現在の耐震基準に合わすこと、またこれからの新たな暮らしが快適なものになるように間取りなどを改めて設計させていただきました。
耐震改修では、現行の建築基準法同等の耐震性能を確保し、断熱改修では床・壁・天井へ断熱材を敷き込み、主要な窓へ内窓サッシを取り付けすることで改善を図りました。
室内の仕上げには、杉無垢材やしっくい・和紙等の自然素材を中心に使用。
シックハウス症候群やアレルギーなどの原因物質が発生しにくい環境で、心地よい暮らしが送れることを目指して改修工事を行いました。
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リフォームのポイント
①耐震性について
こちらのお宅は立派な造りで、建物の骨組みとしては比較的頑丈な印象ですが、1981年5月31日より以前の旧耐震基準で建てられているので、耐震性能が心配されるところでした。
まず耐震診断を行い、リフォームの間取りのご希望に沿って耐震補強が行えるように検討します。
残す部分・新たにやり替える部分というように範囲を想定し、工事費用の面からもできる限り余分な工事をしなくても良いよう耐震補強計画を進めました。
耐震診断での上部構造評点(基礎より上部の建物自体の耐震性能を示す評点)は、改修前では旧耐震基準の建物ということもあり、著しく低い結果が判定されたのですが、
改修後は、現行の建築基準法同等の耐震性能を有すると判定される、上部構造評点1.00以上となるように、建物の構造体の補強、柱・既存筋違への金物補強、耐力壁の施工を行いました。
②断熱性について
少し山手の住宅地の一角に立地していることもあり、冬場の冷え込みが厳しく、これから新たに暮らしていくには不満な部分でした。
新たに床・壁・天井に断熱材を敷き込み、主要な窓への内窓設置により、温熱環境の改善を図りました。
床・壁・天井に使用した断熱材(パーフェクトバリア)は、ポリエステル製の燃えても有害なガスを発生させない、人体への影響に配慮した肌触りもよい健康的な素材です。加えて、床材を熱伝導率の低く保温性能の高い杉板で仕上げることで、肌触りがよく暖かい空間になりました。
③自然素材仕上げでの改修
内装の仕上げ材に自然素材を使用することで健康的な空間づくりを目指しました。
主な素材としては、床に杉板、壁と天井に漆喰・和紙を使用しています。
床や壁、建具などに使用している杉は柔らかく肌触りがよく香りも楽しめる素材です。
たくさんの空気の孔を持つ(多孔質)断面によって暖まると冷めにくく、保温効果があります。
この効果により、床を素足で歩いても冷えにくい環境を創ることができます。実際に体感すると木の温もりややすらぎが気持ちを落ち着かせてくれるように思います。
壁や天井に使用している漆喰には優れた作用があり、抗菌・消臭効果が期待できます。体感すると空気が澄んでいるように感じられるかもしれません。
漆喰の種類は骨材(砂)が混ぜられたヨーロッパ漆喰を使用しています。この漆喰は、テクスチャーにも特徴があり、特に照明器具などの光の加減で色々な表情を見せてくれます。
壁紙として使用している和紙は、ビニールクロスのように静電気を発生させないので、壁や天井に埃が付着し、そこにダニのしがいやカビの胞子が発生するのを抑制することができます。
和紙の特徴として、仕上がったお部屋の雰囲気が柔らかく、多少の調湿作用も発揮してくれるため、落ちつきのある空間づくりができ、和室・洋室どちらにもよく合います。また、壁や天井のクロスと同じような施工ができるため、他の自然素材仕上げと比較して比較的安価であるという点も魅力の一つです。
これらの自然素材を使用した家づくりを行うことで、シックハウス症候群やアレルギーの原因物質でもあるカビやダニを抑制し、化学物質の放散がほとんどない健康的な空間が創りやすいと考えています。
◎自然素材の効果・特徴についてはこちらの記事をご覧ください。
丹陽社の健康住宅 >>
『自然素材のはなし』の記事一覧 >>
『木のはなし』の記事一覧 >>
『住まいの健康のはなし』の記事一覧 >>
▼玄関の壁には漆喰、床には杉無垢材を使用。玄関に入ると杉の香りが漂い、漆喰の白が開放感のある空間を創り出しています。
▼古くこれからの生活に不安があったリビングは対面キッチンで開放的な空間に。
大きな窓には内窓サッシを取り付け、床暖房も施工し、快適なリビングになりました。
▼リビングにつながる和室は、和紙の壁に漆喰天井、琉球畳の気持ちいい和室に改修。
リビングと和室の間仕切建具に、天井までの引込建具を入れることで、一体空間としても、それぞれの部屋としても、使用できるようにしました。
after (1F和室)
▼床にも壁にも杉無垢材を使用した、板倉造り風の空間になりました。
アンティークの照明との相性もバッチリです。
after (1F寝室)
▼水廻りの壁には漆喰を使用しています。漆喰の殺菌作用で室内の空気を清潔に保つことができ、風邪菌などのウイルスを除去してくれる効果が期待できます。
これからの暮らしにあたって
こちらのお宅は先代様が想いを込めて建てられたお家です。
工事中各部の構造の造りを見ていてもそう思いました。
古いお家を取り壊して新築をするという選択肢もあるかもしれませんが、古くても良い部分を活かして、新たに希望のお家に生まれ変わらせてあげることももう一つの選択肢です。
リフォームの場合、これまでのお家の歴史を引き継ぎ、引き続きその歴史を重ねていくことができるので、古いからこそ良い部分を組み合わせたりしながら新築では難しい雰囲気を創り出すこともできます。
そうしたことでこれまでの思い出や先代様の想いも引き継ぐことができるのではないかと思っています。
今回、大規模リフォームを設計させて頂き、このお家の大事な歴史を次の世代に引き継ぐバトンをお渡しする重要な役割を担当させて頂き大変うれしく思います。
こちらのお宅はこれまでの歴史を引き継ぎ、これからも何十年と住み続けることができます。
またこれからお施主様と共にお家も新たな歴史を刻んでいってくれるのが楽しみですね。
無垢材や漆喰の自然素材に囲まれた空間で、いつまでも健康に楽しい暮らしを送って頂けることを心より願っております。
(設計:一級建築士 高島 悠)