伊勢神宮と水中乾燥
【※2016年9月17日の記事を再編集しています。】
おはようございます。
「和みの一級建築士」オカです。
私たちは、国産無垢材をつかって家を建てています。
無垢材は昔ながらの建築材料で、色艶香りそして調湿性など
いいところがいっぱいあります。
でも、十分に乾燥していないと、割れや変形などを起こします。
事前に木材の含水率を8%近くまで下げていればより変形は少なくなるんです。
そのため、私たちの仲間はいろいろ工夫をしています。
一年以上、三年近く天然乾燥をすることを始めとして、
人工乾燥をするのだけれど、その設備をコンピューター制御のできる最新設備に切り替え、
樹脂分が飛ぶのを抑えたり、天然乾燥と人工乾燥を併用して、割れや変形を少なくすることなどです。
そんな工夫の中に「水中乾燥」というのがあります。
「えっ!水中乾燥?」
「水の中で木が乾燥するの?」
という声が聞こえてきそうです。
むかしは、山で木を切って運ぶのに川に浮かべて川上から川下に運んでいました。
そして、運ばれた木は貯木として水の中に浸けられていたのです。
いったん水に浸けてあった材木を取り出してそれから天然乾燥をしていたのです。
それが割れを少なくする方法ではないかと思われています。
滋賀のポリテクカレッジでは定成教授の下、
プールに原木を浸けておいてから天然乾燥させる研究をしておられます。
製材してみると実際、割れが少なかったそうです。
水中乾燥では、細胞の中の弁(有縁壁孔)が水の浸透圧によって開放状態に戻るため
水分の移動が容易になり、樹脂などと水の交換が行われて水分が移動しやすくなります。
そのため、良好な乾燥結果を得ることができると考えられています。
実験以外に、実際にむかしどおり製材をしているところは少ないようなんですが、
長い期間、その伝統を守って超優良な製材を行っているところがあるんです。
それは伊勢神宮なのです。
20年に1回、建物から塀、何もかも建て替える神宮式年遷宮なのです。
平成25年に第62回を迎えました。
なんと千年以上もこの伝統は守られているのです。
その式年遷宮につかわれる木材、ヒノキ材は約10,000立方メートルが必要だそうです。、
樹齢200~300年、1本3立方メートルとしても3,300本が必要になります。
これらが貯木場に水に浸けられて保存されているのです。
水中貯木は通常2年から3年行われるそうなんですが、
この間に水面から出ている辺材はほぼ腐ってぼろぼろになってしまうんです。
式年遷宮では辺材は使わず、固い心材を使います。
伊勢神宮の建物を見ると、橋、鳥居、塀など雨があたるところに
雨除けをつけずに使われている木材も多く、
辺材が含まれていれば直ぐに腐ってしまうかもしれません。
乾燥した心材を使うことにより雨水があたるところでも造替まで
20年間以上も保たせることができます。
時間をかけた伝統的な水中乾燥を使って、割れや変形が少い
優良なヒノキの心材を製材しているんですね。