エアコンいらずの快適生活
エアコンいらずの快適生活
私たちの体には、環境の変化に適応してきた能力が自然に備わっています。
つまり生命を維持するために体の機能が適切に働くのです。
しかし、表面的な利便性や快適性を求め建物の中に自然環境とかけ離れた人工的な環境を作ってきました。
そのような室内環境が、私たちの体の健康を阻害している要因の一つになっています。
ある実験をしたそうです。
普段エアコンのある部屋にいる時間の長い人と短い人を炎天下の屋外をしばらく歩いてもらい、
その後
「温度は30℃と高めに、相対湿度は30%と低めに」
設定した室内に1時間半ほど過ごしてもらいました。
そして15分後にサーモカメラで表面温度を調べ、質問をしました。
普段冷房をかけた室内で長時間いる人は表面温度は高いのにもかかわらず、1時間半の間汗はかいていません。
本人も暑いと言っています。
冷房が効きすぎると体がだるくなるため、なるべくエアコンの入ったところにはいないと答えた人は、表面温度は比較的低く、ずっと汗がでているが、あまり暑いと感じていない。
汗が出ないと常に体温が高く暑いと感じ汗をかくことで表面の温度が下がり暑さを軽減しています。
これらの結果は、普段の暮らす環境が影響しているのですね。
私たちの体には、外部の温度が変動しても体温をほぼ37℃に保つ暖房冷房装置がついています。
暑さが嫌いだからといって安易に冷房をいれてしまうと周囲の温度環境に反応しにくい体を作る要因になるのです。
さて室内において、何が私たちに暑さ寒さを感じさせるかといいますと、空気の温度が高いからと思っていませんか。
空気の温度も多少関係しますが、実は暑さの原因は天井や壁の表面から放出される熱が大きな原因です。
あらゆる物には温度があり、その温度に応じて空気を媒体としない「電磁波」として運ばれてくる熱を放出しています。
それらを「放射熱」といいます。
たとえば焼肉屋さんで熱い鉄板を前にしていると顔のほてりを感じます。それも「放射熱」によるものなのです。
夏なら太陽からの放射によって熱された屋根や壁が室内の表面温度を高くし、そこから放射熱がでます。
特に窓ガラスは太陽からの光をたくさん透過しやすいため床や壁で光が吸収され結果としてたくさんの熱を放出してしまいます。
これらの放射熱が原因となり、私たちに暑さや寒さを感じさせます。
私たちの体は常に発熱しています。夏にかぎらず冬でも熱を外に逃がさないと命にかかわる問題になります。
実はこの放熱するスピードが暑さや寒さを決める要因なんです。
熱の逃げるスピードが速すぎれば寒く感じゆっくり過ぎれば暑く感じるのです。
放熱には「放射」「蒸発」「対流」「伝導」の4つの経路があります。
私たちの身体はこの経路と関係して、常に一定の体温を保つ働きをしています。
身体や床や壁と熱のやり取りをする「放射」。
汗をかいて体温を調節する「蒸発」。
団扇などをあおいで空気の流れを感じる「対流」。
金属などを手で触ると熱さや冷たさを感じる「伝導」などです。
この要素をうまく使うことでエアコンいらずの快適生活が過ごせるのです。
私たちが感じる暑さは放射熱が大きな要因になることが分かりましたが、暑さを防ぐためにはどのような建物にした方がいいのでしょうか。
まず、屋根や壁の断熱性能を良くすることが大切です。
それは、天井や壁の室内側の表面温度を冬には上げ、夏には上がらないようにできるからです。
断熱性や遮熱性をあげると聞くと、建物が自然と遮断され息が詰まるように思う方がおられるようですが、器(建物)をしっかり整えることで開口部の開け閉め等で室内環境を調整することができるのです。
省エネルギーになり環境負荷を軽減できます。
窓ガラスに緑のカーテンを施したり、風を取り込む工夫をして器械に頼らない快適性を得ることができると思います。
新築ならば、
「断熱、遮熱性能を上げる」
特に屋根部分には標準より多くの断熱材を入れ遮熱シートを施すとより効果的です。
「ガラスこそ断熱性が必要」
窓のなどの開口部を通して伝わる熱の量はとても大きいのです。
ガラスの間に空気層を持たせた「ペアガラス」や放射熱を反射させるコーティングをした「Low-Eガラス」があります。
「軒を深くだし、日射を遮る」
夏の日航が室内に入り込むと光が床を暖めて放射熱が発生するからです。
自然界では「快」だけ存在することはありません。
「不快」の中でも「快」の部分を見つけられる身体を持っていることがとても大切だと思います。
今までは、快適環境をエアコンなどの器械によって造りだせるものだと思ってきました。
でも、「快適」というものは私たちの身体の仕組みとそれらを取り囲んでいる環境にあるのです。
そのために、身体がうまく反応できる適切な住まいの環境造りが大切で、あわせて器械や電気の技術を自然の力を活かすような技術へとシフトしていくことが必要ですね。
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